2006年11月26日

地獄他女二籠 第7話 「絆」

 夕暮れの里、何者かが地獄少女から藁人形を受け取る。

 雨の夜道をとばすバイクが雨にタイヤを取られ、カーブの地蔵尊を目がけるように突っこんでいく。空回りするタイヤと転がったヘルメット、そして雨に打たれる地蔵尊の頭―



 葬式の席、「あなたのせいよ!」と声を荒げる母。思わず周りの目が母の方へ集中する。「やめないかこんなところで」。息子(兄)・達也にバイクを買い与えたことで言い争いになる父と母。
  ― 物語の初めの方で、既に家族間の人間関係が上手くいってないことを象徴しているシーンですね。

 四十九日も済んだ家では、母は自室に篭もり「バイク事故で死んだ息子の死を見つめる母の記録」というHPを更新していた。娘・恵美の食事の呼びかけにも全く答えない。
 恵美がカレーを皿によそおうと、「せっかく恵美が作ってくれたのになあ」と父。

 雨の中、日課のように毎時達也の死んだ時刻に現場に行き地蔵に参る母。傘も差さずにいる姿に、恵美は帰ろうと呼びかけるが返事は無い。その様子を上の道路から?あいが見ていた。

 兄の部屋に入りスタンドの灯りをつける恵美。棚の上には数々のトロフィーが並んでいる。 
 ― 兄が優秀であり、母の自慢であったことが窺われます。

 ふと恵美が引き出しを開けると、一体の藁人形が入っていた。
 「どうするつもり」という声に振り向くと、ひとりの少女が立っていた。それが地獄少女だと察する恵美に、あいはその使い方を語る。  

 「契約はまだ果たされていない」「お兄ちゃん、誰を地獄に流そうとしてたの」「分かっているはずよ」その言葉に思わずハッとなる恵美だが、次の瞬間にはあいの姿は消えていた。

 市役所から出てきた母子を報道陣が取り囲む。質問攻めにされてもハンカチを目にすすり泣くばかりの母であったが、「事故は息子さんの過失だったとの説がありますが」の質問にはキッと顔を上げ「息子は悪くありません。達也は殺されたんです!」と反論する。
 「妹さんもお兄さんは殺されたとお思いですか」「お母さんと同じお気持ちなんですか」「通して下さい、通して下さい」
  ― マスコミの過熱気味の報道姿勢にはリアルでもうんざりさせられます…

 なんとか報道陣から逃れ、ベンチに腰掛けた母子。恵美は久しぶりに学校へ行くことを話し、何か食べるようにとサンドイッチを差し出すが、母は通りすがりの青年を達也と呼び追いかけていく。仕方なく恵美も後を追い、膝のサンドイッチは地面に落ち四散する。
 
 陸上部で部活をしている恵美に一目連が記者として近づくが、恵美は不快感を示し振り切ろうとする。
 その時、テレビから聞こえてきた母の声を耳にした恵美は立ち止まる。
 兄の事故現場が、以前から問題があったことが取り上げられていた。市が問題を放置していたこと、誠意ある対応がされていないことを解説者たちが口々に語っている。
 いつの間にか恵美の横に目連が来ていた。「昔なら五寸釘かな。我が子の恨み思い知れってね」「母にとっては兄が全てでしたから」「え?」そう言い残すと恵美は横断歩道を渡っていった。
 「記者っていうのは不味かったね」と骨女。

 居間で唯一の趣味という凧作りをしている父とそれを見ている恵美は、楽しかった昔を懐かしんでいた。
 そこへ母が、父に今すぐこれを300枚コピーしてきて、と一枚の紙を手渡す。
 「ああ」と答えた父が、紙をテーブルに置いた途端、「何やってるの!」と母はいきなり父の作っていた凧を取り上げるとそれをグシャグシャにする。
 「お父さんは達也のこと、どうでもいいと思ってるんでしょ」「そんな事、ないよ」
 ぐしゃぐしゃにされた凧を手にして「達也が好きだったから」という父の言葉にも耳も貸さずに「そんなもの捨てちゃいなさい!」と言い捨てて母は立ち去っていく。
 「お父さん…」「お母さんも辛いんだよ」「うん…分かってる」その夜、トロフィーを眺めながらも、引き出しの藁人形に目を落とす恵美…
 ― 紙を受け取って立ち上がるまでの、ほんのちょっとの時間すら待てないなんて、相当心に余裕が無くなってきているようです。父が達也を想う気持ちより、自分が達也を想う気持ちの方が正しく絶対。そんな気持ちが垣間見えます。

 夕暮れの里でツツジのような花を摘むと、その蜜を吸うあい。
 すると「美味しい?」ときくり。あいがきくりのための花を選ぼうとすると、それがいい、とあいの手の花を乱暴に奪うきくりだが、「不味い」と顔をしかめる。ふと見るとあいは家の方へと歩き去って行くところだった。
  ― きくり、そりゃ蜜はあいちゃんが吸った後だから、美味しくないのは当たり前だよ、と思わず突っ込み ; あいの持ってる物を実力行使で奪うなど、きくりはあいに対して横柄な態度も見せていますが、同等と思っているのか格下と考えているものか…
 一方、あいはきくりの所業には腹も立てないかわりにシカト戦法でしょうか…? 

 茂木家に電話があり、道路が整備されるという連絡が入る。明日記者会見だと喜ぶ母の様子に思わず笑顔になる恵美と父。
 「どうやら糸を解かずに済んだね」と言う骨女に「そうだね」と浮かない顔の一目連。

 会見場所に着いた恵美は母に、このあと家族でレストランで食事をすることを話すが、母は上の空だった。
 始まった市の説明は、道路整備についての説明のみで、達也の事故(死)に対することには何も触れられなかった。
 市に責任は無かったのかという記者の質問に、市の役員(?)は市の管轄外だと返答する。マスコミはそのことについて言及するが、時間だと言って役員は記者会見を打ち切り、記者たちは市の他の疑惑を浴びせながらそれを追うが、残された母は怒りと屈辱に身体を震わせていた。

 帰りのタクシーの中、ひとり言葉にならないひとり言を呟いていた母は、「Uターンして、家に帰ります!」とヒステリックに叫ぶ。
「どうして!? 今夜は3人で…」と必死に母に呼びかける恵美だが、母はそれっきり口を閉ざしてしまった。
 夜、パソコンの前で、自サイトの掲示板に次々に書き込まれた「良かったですね」のログを見ながら、「こんなことでうやむやにされてたまるか」と呟く母の姿を見つめる恵美。

 居間に降りてきた恵美に「分かってやりなさい、母さんにとっては達也が誰のせいで死んだのかが大事なんだ」と父。
 「大事!? じゃあ私達は? お兄ちゃんが死んだのは事故よ、犯人なんていないのに。こんなのおかしいよ!」。
 「おかしいのは分かってるんだよ!」思わず声を荒げる父に、恵美は目を見開く。我に帰り「分かってるんだよ」と続けると、父は手にした缶ビールを飲み干すと、缶をぐしゃりと握り潰した。

 その後の市役所の前の茂木母子。だが、もうどこのマスコミも、このことに関心を示さなくなっていた。
 「これからは君が頑張ってお母さんを喜ばせてあげないと」そばに来ていた一目連がそう励ますが、「母は私が頑張っても喜ばない、母にとっては兄が全て、兄さえいればいいの、家族は兄ひとりなの」と恵美。
 だが、市役所から泣きながら出てきた途端にそこにしゃがみ込んだ母の姿を認めると、恵美は母に駆け寄り、抱きかかえるようにして帰っていった。

 ある日学校から恵美が帰宅すると、兄の写真の飾られた居間の机の上に、風呂敷に包まれたひとつの丸い包みがあった。不審に思い包みを解くと、中から出てきたものは、もげた地蔵尊の頭だった。「ど、どうしてこんなもの…」絶句する恵美。

 その時、鞄を抱えた母が部屋に入って来ると、机の上に札束を重ねていく。
 「何、それ」「借りてきたの」恵美の問いに、HPを見た人が達也の本を作ってくれるの、このお金はそのためのものなの、と答える母。
 達也の素晴らしさを日本中の人に知ってもらうのだ、と夢のように語る母は、地蔵尊の頭を手に取ると「待っててね、達也」と、薄く笑いながらそれに頬擦りする。母の思わぬ行動に衝撃を受ける恵美。

 兄の引き出しを空け、藁人形を見る恵美に「それはもう貴女のものよ」「あとは貴女が決めることよ」というあいの声が響く。

 夕食の用意をする恵美は、母にテレビのボリュームを下げるよう頼むが、母は地蔵尊に頬擦りしながら呪文のように達也と繰り返すばかり。
 そんな時、父が酔って帰宅した。ソファーにどかっと腰をおろした父に、恵美は母が大金を借りてきたことを話すが、父は、じゃあ家を売ろう、足りなきゃお前が働け、と言い放つ。

 「お父さん、もう嫌になっちゃったんだ、何もかもな」
 「た〜つや〜」「た〜つや〜、はっはっは…」「やめてよ」

 「お母さん、テレビ消して」「お母さん!」イライラした口調で母を叱咤する恵美がよそったカレーをテーブルに置く。
 が、それはテーブルの端から床に落ちてしまう。
 見る間に床に広がっていくカレー、母の呪文のような言葉の繰り返し、酔ってソファーでいびきをかく父、テレビから聞こえる大ボリューム、カレーの煮え立つ音、それらが恵美の頭の中で大きく響いていく―

 よろめくように兄の部屋へと辿り付いた恵美。
 「頑張ってきたのに… 一生懸命、お母さんが喜ぶと思って頑張ったのに−」

 そして回想―

 その夜バイクで出かけるという兄に、母が心配するよ、と恵美が言うと「だから行くんだ、俺は母さんの人形じゃない」「母さんがいなければ、うち(我が家)は上手くいくのに」「そんなこと… 言っちゃダメだよ」「恵美には分からないさ」そう言って帰らぬ人となった兄−

 「分かりたく…なかったよ」そう言うと恵美は涙を流しつつ、決意を固めた表情で一気に藁人形の糸を引き抜く。
 天井から一部始終を見ていた目が閉じられた。「恨み、聞き届けたり」。

 ―静かになった居間、放りっぱなしの札束、高いびきの父、机に置かれたままの地蔵の頭…

 地獄へ行く船の上、目覚めた母に地獄へ行くと告げるあい。 
 「地獄? 達也に会えるの?」「いや、多分…」(一目連)  「嬉しい! 達也に会えるのね。たつやぁ〜〜」
  ― 一目連も乗っていたので、彼を息子と間違えるのでは…? −というベタな考えが浮かんでしまいましたが無事でしたね ;
 それにしても、今回のあいちゃんの「この恨み…」の声がすごく切なく聞こえたのですが、気のせいでしょうか…

 −そして…
 脱ぎ捨てられた靴、散らかりっぱなしの居間、「おかあさんをさがしにいってきます 父」と書かれた紙を見る恵美。
 「変なの、みーんな揃ってるのに」「ね」
 食卓には家族の写真が置かれ、それぞれにカレーライスと水が用意されていた。
 
 「いただきまーす」そう言った恵美の胸には地獄紋が刻まれていた…


   ☆ − ☆ − ☆ − ☆ − ☆ − ☆ 


 先回に引き続き、全く救いの無い話です…

 この話を観ているあいだ中自分が感じたのは、「家族間での片想いは辛い」と云う事と「愛情の反対は(憎しみではなく)無関心だ」というマザー・テレサの言葉でした。
 
 親子兄弟とはいえ、ソリが合わない相手というのは存在してしまうものですが、「無関心」は、ある意味、憎まれるより過干渉よりも辛い状況なのではないかと…

 今回、息子のみが自分の全てになってしまい、他の家族は二の次になってしまっている母親が一番の問題なのだと思いますが、自分には次のシーン(やりとり)も気になりました。

 母さんにとっては大事なのは達也が誰のせいで死んだかなんだ、という父の言葉に、兄が死んだのは事故で犯人なんかいないのに…! と恵美が反論すると、それに対して「分かってる…!」と返し、ビールの缶を握り締めると、缶が潰れる鈍い音がしたこのシーン…

 達也が死んだのは誰のせいでもないのに、憎む対象がどうしても欲しいという母の心の歪み…
 そして、そんなことはおかしいと分かっていながら、理解あるよき夫・よき父であり続けようとする父親の姿も、ある意味で歪んでいると感じましたが、最後の方にきてそれがはっきりとした形になって現れてしまいました。

 母が大金を借りてきたと聞いた父は、家を売り娘に働けと言い、自分はもう何もかも嫌になったと言い放ちますが、これはいわば父親業及び大黒柱として働くことの放棄宣言とも受け取れます。
 そしてこの場合の「働け」は、風俗関係と推察されます。勿論酔った勢いで本心では無いとも考えられますが、むしろ素面では言えなかった本心の確率の方が高いように感じられました。

 母が正気を失いつつあるのみならず、父からもそんなことを言われ、自分ひとり頑張って頑張って(家族を)支えてきたわけですから、遅かれ早かれ、いずれ一気に神経が焼き切れてしまっていたでしょう…

 そうして母を地獄送りにしても、結局家族はバラバラになり、恵美自身の目にも狂気の光が宿るという情け容赦ないところは、さすが地獄少女というところですね…

 あと些細なことですが、最初の食事のメニューがカレーライスで、最期もカレーで締めたのは偶然なのか意図したことなのかも、ちょっと気になりました(小笑)。

 それにしても、母・和子役の五十嵐麗さんの演技が秀逸。息子への偏愛ゆえに、徐々に狂気に陥っていく様は見事でした。


 さて次回は、前々から噂になっていた「偽地獄通信」、ターゲット寄りの話のようです。どんな物語が紡がれるのでしょうか。


 追記:母を地獄送りにした夜のメニューはカレーではなく、シチューだったようです。皿にご飯が盛られていたように感じたので、ホワイトカレー(あるのか?)だと思ってしまいましたです ;
posted by セレネ at 16:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 地獄少女 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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